第6回:施術家デビュー・不安・光明
接骨院では患者さんを施術するといっても、最初から誰にでも施術するわけではありません。
難しくない症状の方で、治療院のスタッフと仲良くなる程常連の方に、
事情(その日が初めての施術という意味)を伝えて、了解頂いた上で施術するのです。
私が初めて施術させて頂いた方は男性で、全身疲労の方でした。
当時は今と全く違うやり方で施術していましたが、かなり緊張しましたね!!
この時が、仕事として人の体に触ったのは初めてでした。
あれ以来、患者さんの数にして、万単位の施術をして来ましたが、あれほど緊張したことはありません。
何をしたのかは覚えていないものの、患者さんの顔だけは今でもハッキリと覚えています。
施術時間にして、30分足らずだと思いますが、終わったあと、疲れて休憩室で休んでいる私に、スタッフのみんなから握手を求められ、プロの施術家として小さいながらも1歩、歩き始めたことを実感しました。
デビュー後、スタッフや患者さんから色々な励ましや注意を受けながら、少しずつ私なりに成長しておりました。
施術で余裕が出てきたら、仲の良い患者さんにカイロ学校の技術を使用して、症状緩和の為、試行錯誤を繰り返してたのが思い出されます。
そんなこんなで、その数ヶ月後には段々私にも指名してくれる患者さんが増え、傍目には順調に進んで見えたと思います。
しかし、この時の私は悩んでいました。
私がもっと若ければ、悩みもせずに現状に満足していたと思いますが、その時の年齢を考えれば、ノンビリしていられなかったのです。
悩みというのは、患者さんの治癒でした。
接骨院で教えて貰った技術やカイロ学校で学んだ技術は、当時の私には最初凄い事のように見え、実際効果もありました。
しかし、その時「楽になった!」と喜んだ患者さんが次の日、又来院してくる事が実に多いのです。
今なら、その理由は分りますが、当時は分らず、自分の技術の未熟さを責めました。
でもよく見ると、先輩や上司が施術した患者さんも当たり前のように次の日に来院してくるのです。
勿論、私の未熟な技術もありますが、それだけではないように、思えてきました。
学校の直営施術院でバイトしている学生にも、整体院での治癒の現状を尋ね廻りましたが、私の求めていた治癒スピードを答えてくれた人はおりませんでした。
「整体の施術はこんなものなのかな?」と思い始めた頃、ある人と出会いました!
私の通っていた整体の学校では、時々授業とは別にセミナーが催されていました。
このセミナーでは手技業界の世界で著名な外部の先生を講師としてお招きし、
その技術を学生に学ばせるという意図から、不定期で行われていました。
しかし、そのセミナー料金が当時の私からすれば高額だったという事と、参加した仲間からあまり良い評判を聞けなかった事から、参加に積極的では無かったのです。
そんなある日、掲示板に次のセミナー日程が張り出されました。
講師の先生は、オリンピック選手の専属トレーナーという肩書きがある、
九州で整体院を経営している方でした。
この時は、特別興味が湧くこともなく、いつも通りにセミナーに参加はしませんでした。
セミナーは学校の休日に行われていたのですが、セミナー翌日、学校に行くと、参加した仲間が「凄かった!」と興奮しながら話し始めました。
彼によると、講師のほんの少しの動きで体がやわらかくなったり、痛みが軽減したり、力が強くなったりで、まるで魔法のようだったそうです。
当時、施術方法に迷いがあった私は、参加しなかった事を心から悔やみましたが、後の祭り・・・。
でも、まだ実際に見ていないものの、そんな整体技術がある事は、私に大きな希望をもたせてくれたのです。
このセミナーが、かなり学生間で好評だった事もあり、「応用編」と銘打って2回目のセミナー開催が数ヶ月後に決まりました。 私がすぐに申し込んだのは言うまでもありません。
当日は、学校の許可を得てビデオを持込み、施術法を何度も見られるように全て撮影する段取りを組むほど入れ込んでいました。
参加して、目から鱗が何枚も落ちたような気分が!
当時の私は痛い箇所の筋肉や骨のずれを一生懸命施術していましたが、この先生は、痛い所と関係なさそうな所を触り、痛みを軽減させていくのです!
今の私からすれば、痛い所は結果に過ぎず、原因は他にあるというのは、理解出来ていますが、当時の私や周りの学生たちは経験未熟で理解の範疇を超えていたのです。
この時、整体の学校では知り得ない、色々な整体技術の可能性と共に、人体の不思議に大げさに言えば、感動した事を憶えています!
セミナー終了後、講師の先生と直接お話しする機会が無かったので、後日、手紙で(古いでしょ(笑))この思いをしたためました。
すると、「良ければ九州まで来なさい」という有り難いお返事を頂き、私と思いを共にする仲間と伺う事になりました。
お金があまり無かった私からすれば、新幹線で九州まで行くのはかなりの出費ですが、この時はそんな事は全く感じずに、目の前に道が開いた気分で、ウキウキ気分で出発しました!
接骨院の治療が土曜の午前中まであるので、昼一番に上がらせてもらい、その足で新大阪に向かい、九州の整体院に着いたのが、夕方前だったという記憶があります。
緊張しながら整体院を探すと、繁華街の大きなビルにありました!
恐る恐る入っていくと、まず、大きなスペースにある「リング」が目に入ってきました!
先生がボクシングの経験があったので、エクササイズとして取り入れているのを後になってから知りましたが、この時は、「入門試験」として、リング上で戦わされるのではないかと、半ば本気で心配していましたよ(笑)
九州に行く前から、先生より、「誰にでも技術を教えるわけではない」と言われていましたので、つい「入門試験」という発想が出たわけです。(苦笑)
先生は施術中であることを、私からすれば、「先輩」になるかもしれないスタッフから聞き、待たせていただくことに。
しばらくしてから、いよいよ先生が登場!まず挨拶をさせて頂き、熱い思いを私なりに伝えました。
先生はしばらく黙って話しを聞いてから、おもむろに整体院のベッドに横になり、体をほぐすように指示されました。
(これが入門試験か!)と思いながら自分に出来る、精一杯をさせて頂きました。すると、先生から意外な一言が!
今回はここまで!
又次回掲載は未定ですが、お楽しみに!
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