あがり症と呼吸の苦しさ

人前に立つと、急に胸がドキドキして息が苦しくなる。
発表の場で、息がうまく吸えなくなって声が震えてしまう。
あがり症でお悩みの方の多くが、このような「呼吸の苦しさ」を経験されています。そして、その場を切り抜けようと「落ち着いて、深呼吸をしなきゃ!」と必死に息を吸い込もうとします。

しかし、あがり症を改善するプロの視点から言わせていただくと、「あがっている時に頑張って深呼吸をしようとする行為」は、むしろ逆効果です。
今回は、あがり症の人が緊張したときに本当に必要な「つま先から頭のてっぺんまでの呼吸」について解説します。
■ なぜ深呼吸をしようとすると、余計にあがるのか?
あがり症の方は、人前に出た瞬間、無意識に以下のような反応を身体で起こしています。
・「失敗してはいけない」とみぞおちを硬くする
・身体を守ろうとして肩をすくめ、胸をすぼめる
・言葉を詰まらせないように奥歯を噛み締め、首の後ろを固くする
このように、全身が「ガチガチの鎧(よろい)」を着た戦闘モード(交感神経が極限まで高まった状態)になっているのです。
この状態で「深く息を吸おう」としても、風船(肺)を囲む壁がカチカチなのですから、空気は入っていきません。
無理に吸おうとすればするほど、胸の圧迫感が強くなり、脳は「息ができない!大ピンチだ!」と判断して、さらにパニック(過緊張・赤面・手の震え)を引き起こします。
■ あがり症と自律神経の「医学的根拠」
なぜ、身体を固めるとあがり症が悪化するのでしょうか。
神経生理学の知見(ポリヴェーガル理論など)によると、人間が脅威(人前でのスピーチなど)を感じたとき、自律神経は交感神経を跳ね上げ、体を硬直させます。
特に呼吸をコントロールする「横隔膜」の周囲には、脳に「安心・安全」のサインを送る迷走神経(副交感神経)が集中しています。
胸やみぞおちが硬くロックされると、この迷走神経の働きがストップし、脳は暴走状態になります。これが「頭が真っ白になる」という現象の正体です。
つまり、あがり症を克服するために必要なのは、呼吸のコントロールではなく、「恐怖によって固まってしまった全身の制限(ロック)を外してあげること」なのです。
■ つま先から頭のてっぺんまでの呼吸を取り戻す
当院が施術で目指すのは、「つま先から頭のてっぺんまでつながる呼吸」です。
これは特別なことではありません。
私たちが赤ちゃんの頃、みんながやっていた呼吸です。
緊張のない赤ちゃんは、人に見られていようがいまいが、全身をゆったりと波打たせて自然に呼吸をしています。
あがり症の方は、成長の過程で「良く見せたい」「嫌われたくない」「本音を隠したい」という思いを積み重ね、その精神的ストレスを「筋肉の力み」として身体にコレクションしてしまっているのです。
当院の気功整体では、
・緊張でロックされたみぞおち・横隔膜を優しく解放する
・声を出しにくくしている首や顎、胸郭の歪みを整える
・大地にしっかり立てるよう、足首や骨盤の重心を整える
これらを行うことで、息を吸ったときにその圧力が全身へと自然に抜ける「通り道」を再構築します。
ブレーキが外れれば、人前に立っても「勝手に身体が深く穏やかな呼吸をしてくれる」ようになります。
脳に常に安全信号が送られるため、過度にあがることがなくなり、本来のあなたのままでリラックスして話せるようになるのです。
頑張って自分を変えよう、呼吸を変えようとする必要はありません。
身体の制限を外して、本来の自分を思い出してみませんか?
参考サイト
厚生労働省(e-ヘルスネット):不安症(社交不安症などへの言及)
人前での過度な緊張(あがり症)や自律神経症状の概要
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-003.html
J-STAGE(日本不安障害学会誌):社交不安(あがり症)における身体緊張と呼吸
対人恐怖やスピーチ時の緊張における、自律神経(交感神経亢進)と呼吸の浅さ、身体的硬直の関係性に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsad/13/1/13_130109/_article/-char/ja/
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自律神経の乱れから腰痛、肩こりまで
大阪城東メンタルヘルス気功整体院
院長 上西 誠







